eMAXIS Slim 先進国株式インデックスの受益者還元型信託報酬を解説

つみたてNISAでも屈指の人気商品であるeMAXIS Slimシリーズ。

その中でも一番人気とも言える「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」の純資産残高が500億円を突破し、信託報酬が実質引き下げになります。

今回は背景や具体的な信託報酬について考えていきましょう。

ぶくろー君
現役FPの私が、この商品の最新情報と注目している点をお伝えします。

1. 純資産総額が500億円を突破

冒頭にもある通り、eMAXIS Slim先進国株式インデックスの純資産残高(ファンドに投資された金額)が500億円を突破しました。

先進国株式ファンド自体が始まったのは2017年2月ですが、つみたてNISA制度が2018年1月に始まったことを加味すれば、実質1年半程度で500億円に到達したことになります。

2. 純資産額の信託報酬が引き下がる

eMAXIS Slimシリーズの場合、純資産額が500億円を超えたことは大きな意味を持ちます。

なぜなら、Slimシリーズは“受益者還元型”信託報酬率を採用しているため、私たちが運用する際のコストとなる信託報酬が引き下がるからです。

2-1. 受益者還元型とは?

受益者還元型とは、ファンドの規模が大きくなったことによる利益を出資している投資家に還元するしくみです。

一般的な投資信託はファンドに集まるお金の額が増えれば増えるほど、運用にかかるコストの割合は低く抑えられます

ぶくろー君
簡単な例として、ファンドマネージャーが100万円分の投資信託を運用するコストに1万円かかる場合を考えてみましょう。

100万円を運用するためのコストが1万円ですから、信託報酬を1%に設定しました。

ではファンドが成長して、純資産額が1億円まで増えたとき、運用コストは100万円まで膨れ上がるでしょうか?

運用額が100万円の時と1億円の時で、人件費などの経費が100倍になるわけではないですよね。

つまりお金が集まるほどファンド側としては手数料を浮かせられるのです。

2-2. eMAXIS Slimシリーズは投資家に還元される

しかしファンドに投資されるお金が増えていくのは、私たち投資家が商品を買っているからに他なりません。

そこで、eMAXIS Slimシリーズの運用額が増えていったら、ファンド側で浮いた運用コストを信託報酬の引き下げという形で還元する。

ぶくろー君
これが「”受益者還元型”信託報酬」というしくみです。

 

これによって、

運用会社:より純資産額が増えて収益アップ
投資家:より低い信託報酬で運用できる

と、運用会社と投資家の間でWin-Winの関係を構築することができるのです。

3. 今後の信託報酬はいくらか?

では受益者還元型信託報酬が適用された場合、信託報酬はいくらになるのでしょうか?

信託報酬の額は、ファンドの純資産額によって変わってきます

三菱UFJ国際投信の公表した資料には、信託報酬についてこのように記載されています。

この表を見ると、

「今回500億円に到達したので、信託報酬が0.005%引き下げになるのか!」

と勘違いしてしまいそうですが、そういうことではありません。

ぶくろー君
信託報酬を求めるには、若干の計算が必要になります。

3-1. 計算方法

eMAXIS Slimシリーズの信託報酬の計算方法は、純資産額のそれぞれの金額に対応する信託報酬を掛け合わせてから合算します。

つまり、500億円までの部分に関して0.0999%のままで計算して、500億円を超えた分は0.949%で計算するということですね。

このため、純資産額が500億円を超えていれば、純資産額が上がっていくにつれて、実質の信託報酬が徐々に低くなっていきます。

ぶくろー君
わかりづらいと思うので、具体的な純資産額と信託報酬率を示していきます。

3-2. 2019年7月現在の信託報酬

2019年7月時点での、eMAXIS Slim先進国株式の純資産額は507億円ですので、この場合の計算をしてみます。

この場合、500億円までは0.0999%、超えた7億円を0.0949%で計算しますので、

(500億×0.0999%+7億×0.0949%)÷507億円=0.0998%

となります。つまり税込で

約0.1078%

となります。

ぶくろー君
500億円を超えている額が少ないため、今までとほとんど変わりがありません。

3-3. 純資産額が1000億円に達した時

ではこのペースで純資産額が増加していき、現在の2倍である1000億円になった場合を考えてみます。

その時の信託報酬(税込)は

約0.1051%

となり、結構だんだん下がっていることがわかると思います。

3-4. 純資産額が5000億円に達した時

現在、日本国内にある投資信託で純資産額が多いものは5000億円ほどですから、eMAXISシリーズもこの規模まで成長した時を仮定してみましょう。

その時の信託報酬(税込)は

約0.0987%

となります。

ぶくろー君
信託報酬が税込でも0.1%を切ることになります!

ちなみにここで算出した信託報酬は全て消費税が8%の場合のため、消費税増税で変化します。

4. メリット:他の先進国株式投信よりもお得に

現状の先進国株式の投資信託の中では、eMAXIS Slimの先進国株式インデックスは最も信託報酬が低くなっています。

しかし同じ先進国株式の商品には、全く同じ信託報酬の「ニッセイ外国株式インデックスファンド」という商品もあるわけです。

今回の受益者還元型の信託報酬が発動したことで、少しずつですがeMAXIS Slimの実質の信託報酬が安くなっていくことになります。

特につみたてNISAでの運用では信託報酬の低さがとにかく重要ですので、他の商品を選んだときよりも少しずつですがメリットとして出てくると思われます。

5. デメリット:実質の信託報酬がわかりづらい

信託報酬自体を引き下げるのではなく、受益者還元型として信託報酬を引き下げることには、「一体今の信託報酬がいくらなのかわからない」というデメリットもあります。

当然ですが、ファンドの純資産額は日々の売買によって変動しています。

純資産額に応じて信託報酬も変動するこのしくみは、今の信託報酬が一体何%なのか、わかりづらくなってしまいます。

ぶくろー君
他社が同じようなシステムの導入したとき、きちんと信託報酬を計算して比較できる人は果たしてどのくらいいるのでしょうか…。

6. やっぱりオススメ投信「eMAXIS Slim」

ここまで色々解説してきましたが、結局のところ2019年現在では「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」が最もお得な信託報酬の商品であることに変わりはありません。

そして、最近の投資信託が様々な工夫により、私たちがよりお得に投資しやすい環境がどんどん整っていることは事実です。

ぶくろー君
特に受益者還元型のしくみは、ぼったくり投資信託で金融機関がぼろ儲けしていた時代からは全く想像ができなかったでしょう。

金融商品や制度はどんどん新しいものが出ていきますから、きちんと情報をアップデートし、お得に運用できるようにしたいですね。

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