最近には就活のためにFP(ファイナンシャルプランナー)の資格を取る人も多いようで、試験会場には大学生の姿も時々見られます。
しかし現役FPとして、社会人として働いている私の結論からすると、FPの資格は就活で全く役に立ちません。
今回はFP資格の取得を検討している学生に向けて、
という3点についてお話しします。
1. 学生が取得できるFP資格
まずFPの資格にもいくつか種類がありますので、その中でも学生が取得可能な資格の種類とその評価を簡単にお伝えします。
1-1. FP3級…履歴書に書かない方が良いレベル
まずFP資格の入り口とも言えるのが、「FP3級」です。
FP3級の正式名称は「3級ファイナンシャル・プランニング技能士」であり、厚生労働省認定の国家資格となっています。
こちらは年に3回の試験に合格すれば、FP3級を称することができます。
ただ、FP3級は履歴書に書いたら恥ずかしいレベルと思った方が良いです。
このFP3級の試験は本当に簡単で、人によっては数日も勉強すれば合格できるほどの難易度だからですね。
1-2. FP2級…履歴書に書いても評価されない
「FP2級」はFP3級より1つ上の資格で、FP3級合格で受験することができます。
正式名称は「2級ファイナンシャル・プランニング技能士」であり、3級同様に厚生労働省認定の国家資格となっています。
こちらも年に3回試験が実施されていて、試験に合格すればFP2級を名乗ることができます。
3級と違って合格するためには多少の勉強が必要とされますが、こちらの2級も正直就活には全く有利になりません。
1-3. FP1級…学生では取得できない
お金の真のプロフェッショナルと言えるのが「FP1級」ですが、そもそも受験資格として1年以上の実務経験が必要です。
そのため学生のうちに取得は不可能なため、ここでは割愛します。
1-4. AFP資格…お金のムダ
FPの資格には、一般的に知られている国家資格のFP○級というものの他に、AFPとCFPという2つの民間資格があります。
こちらは実際にFPとして活動する人が、自己スキルを更新していくための資格です。
こちらは民間資格ですので、試験に合格するだけでなく毎年年会費を払い続ける必要があります。
そして年会費を払うほどの価値がAFPにあるかというと、一般企業への就活では価値は0です。
就活で有利になりたいという理由であれば、お金の無駄でしか資格なので、やめた方が良いでしょう。
2. なぜFP資格は大学生の就活で評価されない?
「どのFP資格を持っていても就活では有利にならない。」
これが1級の試験まで合格し、社会人として働く私の結論です。
なぜ学生の就活でFP資格は使えないのか、大きく分けると2つの理由があると私は考えます。
理由1. 学生が取れるFP資格は努力に値しない
1つ目の要因は、学生が取得できる上限のFP2級の試験が簡単であることです。
そもそも、なぜ企業は学生の学歴や資格を重視するのでしょうか?
それは、「あなたが頑張れる人間かどうか?」という人間性を学歴や資格は映しているからです。
例えば私の母校である東京大学は、就活に圧倒的に有利と言われています。
その理由は、学生の高い能力値という側面以上に、「この人は高校時代にきちんと勉強して、東大に合格するために努力した」という事実を企業が評価しているからなのです。
受験勉強でも資格勉強でもその他の活動でも、きちんと目標に向かって頑張った経験のある人間は、入社後も必要な知識をインプットして会社のために働いてくれる可能性が高いです。
そういった背景がある中で、1ヶ月ほど適当に勉強すれば合格してしまうFP2級は、あなたの努力を証明できるほどの資格ではないのです。
理由2. FPで学ぶことは「個人のお金の相談」
と思っている人は、FPの内容をそもそも誤解しています。
FPの資格に必要なものは、個人の人生におけるお金の知識です。
つまり既存にある制度を正しく理解し、各種金融商品の性質を知って提案することがFPの仕事です。
一方、金融機関等は商品や制度を作る立場であり、自社の商品をどのように売って収益にするかが鍵なのです。
- FP資格で身につく力…
今ある制度や商品を理解し、個人のお金周りを解決する能力 - 企業で必要な力…
自社の制度や商品を0から作り、販売する能力
そもそも銀行や保険会社等に入れば、社内研修で必要な知識を全て身につけることになりますし、FP資格も団体受験という形で取得することになります。
つまり企業側からしても、学生がFPを既に保有しているからといって優遇する理由がないのです。
3. FP資格が有利となる企業とは?
世の中の大半の企業でFP資格が有利とならない中、唯一FPの資格が就活に有利に働く企業があります。
それは個人の資産設計の相談業務を行うFP事務所です。
仕事そのものでファイナンシャルプランニングを業務を行うわけですから、当然FP資格があった方が有利に決まっています。
しかし、これもFP資格があれば完璧かというと、全くそんなことがありません。
FP業務の基本は、お客さんの悩みをヒアリングし、適切な提案を行い、信頼を勝ち取ることです。
そのためにはコミュニケーション能力が何よりも重要であり、知識はその後でつけるべきものです。
4. FPをやる代わりの就活生にオススメの資格は?
先ほども述べたように就活において資格という存在は、中身よりも取得に対する姿勢や努力を評価します。
ただ1つだけ、能力をそのまま示して企業が重要視する資格があります。
それが英語力、つまりTOEICの点数です。
何故英語力は評価されるのか?
英語は上達に長い年月がかかり、企業からしても社内の研修などで能力を上達させづらい分野です。
そのため英語力が高い就活生はどの企業でも評価されます。
今から就活のためにFPの資格を取ろうとしている人は、その時間をTOEICの点数を1点でも上げるための勉強に向けた方が良いでしょう。
5. FPの知識は学生のうちに身につけるべき
ここまで、就活におけるFPの価値を散々批判してきました。
ただ私は、就活に使えなくても、大学生のうちにFPの資格を持っておくことに大きな意義があると思います。
学生のうちからFPの知識を持っておくことに、3つのメリットがあります。
メリット1. 可処分所得を増やすことができる
まず1点目に、結果的に自由に使えるお金(=可処分所得)を増やせる点です。
世の中の大半の人が「年収が高ければ良い生活ができる」と勘違いしています。
しかし理想的な生活をするためには、収入面以上に支出面や資産運用の側面の方が何倍も重要なのです。
裏を返すと、いくら年収が高くてもお金の知識がないと、税金や保険などで無駄な支出を繰り返し、いつまで経ってもお金に余裕のある生活はできません。
FPの学習によって正しい知識をつけることで、今後の人生の判断において間違った選択で損をする確率を大きく下げることができます。
メリット2. 全て自分で意思決定しなければいけない
学生の場合、今まで身の回りの必要な手続きは全て親御さんが代わりに行ってくれていたと思います。
しかし社会人になって自分で収入を得る身になれば、当然自分のことは自分でやらないといけません。
年金の手続き、税金の支払い、住む家の契約etc…。
特に年金や税金の支払いは国民全員の義務であり、きちんとやらないと罰金等でより損を可能性もあります。
知らなかったでは済まされないのですから、時間のある学生のときにFPの勉強を通じて知識の整理をしておくことは意味があると考えています。
メリット3. 国や金融機関に騙されなくなる
こういう考え方の人は、一生損をし続ける典型的なパターンの人です。
国は税金をより多く取るために、金融機関は自社の利益をより稼ぐために活動しています。
は自社の利益のために様々な金融商品を売るのであって、それがあなた自身の利益になることとイコールではありません。
逆に自ら知識を身につけている人だけが、本当に自分にメリットがある良い制度や商品を見つけることができます。
お得な制度や良い商品を選ぶためにはそもそもどのような知識が必要か、それらを網羅的に理解することがFPの資格の勉強で実現できるのです。
まとめ:FPは就活のためではなく人生のために
結論として、学生のうちにFPに関する簡単な知識を持つことはとても重要です。
ただそれは就活で有利にするためではなく、自分自身の将来をもっと豊かにするためです。
私自身も、FPの資格を取ってからお金に対する見方が大きく変わったな、と感じています。
自分の知識の整理のために取るのであれば、一番簡単な3級で十分だと思いますので、時間がある人は未来への投資だと思って受験してみるのはアリでしょう。