今回は1級ファイナンシャル・プランニング技能士試験(通称:FP1級)の難易度について考えていきます。
読みたい場所へジャンプ
1. 「FP1級」はどれを指すかで難易度が異なる
国家資格であるFP技能士のトップとなる1級は「難しい」というイメージを抱かれることが多いですが、「FP1級」は資格そのものなのか試験を指すのかによって難易度は変わってきます。
FP1級の資格そのもの…簡単になれる方法もある
FP1級学科試験に合格…かなり難しい
2. FP1級の資格自体は難しくない
まずはじめに、FP1級になること自体は決して難しくありません。
なぜならFP1級になるためには、CFP取得からのFP1級実技試験ルートというのも存在するからです。
2-1. CFPの取得は時間とお金で解決可能
CFPとは、FPの民間資格の一つです。
CFPになるためにはCFP資格審査試験を通過する必要がありますが、CFP試験は全く難関ではありません。
その理由として6科目から成るCFP試験は、一度に6科目全て合格する必要はないことが挙げられます。
CFP試験は1年に2回ありますから、1分野に6ヶ月かけ、トータル3年で取得しても良いわけです。
そしてCFPの試験の1科目ごとの難易度は、FP1級の学科試験の1分野とほぼ同じレベルですから、1回あたりに必要な勉強量も6分の1です。
時間とお金さえかければ、CFPというのは誰でも取れる資格です。
2-2. FP1級の実技試験も70%を超える合格率
そしてCFPがFP1級を取得するためには、FP1級の実技試験を受ければ良いのですが、これもまた簡単です。
詳しくはFP1級の実技試験のところで取り上げますが、FP1級実技試験の合格率は8割以上。普通に対策をすれば落ちません。
以上のことをまとめると、CFPを取得した後にFP1級の実技試験をパスすれば、FP1級を名乗ることはできます。
3. 難しいのはFP1級の学科試験
一般的に「FP1級が難しい」と言われるのは、きんざい(金融財政事情研究会)だけが実施する「FP1級の学科試験」のことを指します。
この試験の合格率は4%〜12%で、簡単に言えば試験会場にいる人のおよそ10人に1人くらいしか合格しないわけです。
そして合格率以上に、FP1級の学科試験が難関であると考えられる要因がいくつかあります。
3-1. FP1級学科試験の受験者はFP2級の合格者
FP1級の学科試験を受験には、受験資格として「2級合格者で1年の実務経験」と「5年の実務経験」のいずれかが必要とされます。
ただ実務経験だけで1級に合格することはほぼ不可能なため、FP2級の取得が実質の受験資格と言えるでしょう。
この受験資格というのは、試験の難易度を考える上で合格率以上に重要な要素となります。
例えば、不動産を扱う宅建士も合格率は15%程度ですが、宅建士には受験資格の制限が一切ありません。
当然受験者の中には勉強してこない人も相当数いて、そもそも母集団のレベルが高いとは言えないのです。
しかし、FP1級の学科試験のスタートラインはFP2級合格ですから、全く勉強をしてこなかった人は存在しません。
つまりFPに対する最低限の知識は受験者全員が持っているわけです。
FP2級で絞られている受験者層でもこれほど低い合格率は、FP1級の学科試験が2級までの生半可な知識では全く太刀打ちできないことを表しています。
3-2. 実際の受験者数はもっと多い
2級までは午前学科試験、午後実技試験と分かれていましたが、FP1級では学科試験自体が昼休みを挟んで、午前の基礎編と午後の応用編に分かれています。
受験してみると分かりますが、午前に人が座っていた席が午後には空いているというケースが結構多いです。
そしてきんざいが公表する受験者数には、この途中帰宅した人はカウントに入っていません。
きんざいが公表する合格率は「合格者/受験者数」ですから、
・申し込んだが勉強が終わらなくて受験そのものを諦めた人
・午前だけで絶望して帰ってしまった人
を考えれば合格率はもっと低くなるはずです。
ということで、「FP1級学科試験」が難関であることがおわかりいただけましたか?
ここから先は「FP1級=FP1級学科試験」と表現していきます。
4. FP2級とFP1級の難易度を比較
FP1級を学科試験から狙う人の多くは、FP2級を通過してくるルートだと思います。
そこで1級の学科試験が2級までの試験とどのように変わるか紹介します。
4-1. FP1級は完全に別物の試験
FPの1級と2級の間には、とてつもなく大きな壁があります。
3級と2級の間は、問題文が難しくなりはしたものの、知っておくべき知識そのものに大きな違いはありません。
しかし1級は、2級まで覚えた内容の2倍か3倍の知識を新たに覚えなければいけません。
4-2. 何故2級より難しいの?
FP1級の試験が2級よりも段違いで難しくなる理由には、3つの要因があります。
各分野で広く深い知識が問われる
FP試験は大きく分けると6つの分野に区分できますが、それぞれの分野のプロフェッショナルとして「士業」の人がいます。
例えば年金分野であれば社労士、税金分野であれば税理士といった形ですね。
FP1級の試験では、この士業試験の一歩手前レベルの知識を必要とされることがあります。
もちろん社労士や税理士の知識が丸々必要ということではありませんが、それでも問われる内容はぐっと深くなります。
基礎編の4択の択一問題が難しくなる
主に基礎編の問題に言えることですが、4択の難易度がグッとあがります。
その理由としては文章の内容が難しくなるのもあるのですが、1つの問題で聞いてくる範囲が広がってくるのです。
2級の出題では、1つの問題でりんごについて色んな側面から聞かれます。
問題)りんごに関する文章のうち合ってるのはどれ?
①りんごは熟れると青い。
②りんごはしょっぱい。
③りんごは地面の中で育つ。
④りんごは秋〜冬が旬である。
答え:④
問題)フルーツに関する文章のうち不適切なものを選べ。
①スイカの原産国はアフリカであり、含有水分量が多いため、アフリカでは水分補給に重宝されている。
②昔の日本では柿の酸味がなく甘みが強い点を利用して、砂糖代わりに用いられていた。
③リンゴの蜜の成分はマンニトールと呼ばれる物質、そのマンニトールが甘み成分となるショ糖などに変化する。
④柑橘類であるグレープフルーツに「グレープ」と名前がつくのは、ぶどうのように重なって実をつけるとされる。
答え:③(マンニトールではなくソルビドール)
つまり2級では1つの問題を解くために使えた知識が、1級の場合では1つの選択肢を絞り込むためにしか使えないことが多々あります。
さらに間違いの選択肢の単語等も細かな違いとなるため、全ての知識を広く正確に覚えていないと、4択の選択肢を絞り込めないわけです。
応用編ではアウトプット力も必要
ファイナンシャルプランナーは、お客さんのお金や人生をヒアリングして聞く提案していく仕事です。
それを反映してか、1級試験の午後に実施される応用編では解答形式が全て筆記となります。
すると
「高年齢求職者給付金」「消費税簡易課税制度選択届出書」
といった長い単語も正確に覚えて記述したり、年金や税額といった複雑な計算も答えだけでなく、計算過程も答える必要があります。
今までの人生で、マークシートだけで何とかなるテストを選んできたなど、書く習慣がない人にとって応用編のテストは厳しいものとなるでしょう。
5. 結論:FP1級の「学科試験」は非常に難関
FP1級は2級までと比べて全く違うレベルの試験です。
時間をかけてまでFP1級を取得することが本当に自分にとって価値のあることなのか、受験を決める前に一考した方が良いでしょう。